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伝統と創造茶道と建築音楽と建築職人との協働生活と設計あるべきようは

フェノロサが薬師寺東塔を「凍れる音楽」と評したのをはじめ、古来建築と音楽は比較され論じられることが多いように感じます。構築的といわれるベートーヴェンの交響曲などは、まさに壮大な建築物に例えられますし、数学的といわれるバッハの音楽は、音楽そのものが美しいのはもちろん、楽譜やその構成にすら美しさがあり、そういったところに建築と共通する点があると言えるかもしれません。また不屈の精神で革新的な音楽を作り続けたベートーヴェンの音楽ほど、何か創造的な活動をしようとする人間に勇気を与えるものはないように感じます。実際に音楽を聴いたり、楽器を演奏したりして感じ得たものを、創り出そうとしている建築をより豊かなものにするための一助とすることが出来ればと考えています。また近現代の作曲家たちが行って来た様々な試みは、古典に対する挑み方といった意味などで建築設計にとっても参考になる事柄があるかもしれません。設計図を描き、多くの職人に施工を依頼し、現場で監理にあたる設計者は、作曲をした楽曲の演奏をオーケストラに依頼し、自ら指揮する指揮者と似ている、と感じます。「我々は釘一本打つ事すらできないのだ」という白井晟一の言葉を真摯に受け止める時、いっさいの楽器を演奏せずに、タクトだけで感動的な音楽を紡ぎ出すマエストロの仕事は、ジャンルは違いますが、建築設計者の見本、目標となるもののように思います。演奏する曲の構造を分析し、作曲された時代背景やその国の文化までも深く理解し、演奏される音を鋭い感覚で捉え、演奏者との対話を持って、細部にこだわりながらも壮大なシンフォニーをまとめあげていく姿はいつも感動的で、そのようなかたちで、ひとつの建築をまとめあげていくことが出来たら、と考えています。

岩崎建築研究室